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洪水伝説 ラマ Ver.
ある男が、草のよく生い茂った場所に飼っているリャマを連れていき、腹一杯食しなさいといいました。
しかし、リャマは食べようとせず、悲しそうにしています。
「どうしたんだい、この草が気に入らないのかい」
と男が聞くと、リャマは
「悲しくて、食べられません」
といいました。
「なにがそんなに悲しいんだい、わたしはおまえを大事にしていないかい」
男が不思議に思ってそう聞くと、
「そうではないのです。実は五日後、海の水があふれて大地を沈めてしまいます。それなのに呑気に草を食んでいられるでしょうか」
いきなりのリャマの告白です。
男はそりゃビックリ。顔色変えてリャマに迫ります。
「本当かい」
「本当です」
「大変だ。どうにかして助かる術はないかい」
「ないことはないです。五日分の食料を持ってウィリャコト山の頂上へ行くのです」
男は速攻食料を用意し、リャマの背に積んで山へ行きました。
そして、避難してきたあらゆる鳥と獣ともにじっと待機していました。
しばらくして。
海の水がなみなみとあふれ、大地を浸食しました。
人々は皆溺れ、水位は日々いや増し、五日目についにウィリャコト山頂上付近に迫りました。
獣達は水に飲まれまいと押し合い、押し出された狐は尻尾を水に濡らしたため尾の先が黒ずんでしまいました。
五日を過ぎると水は退きました。
男はリャマを連れ、てくてく山を下りました。
そして、この男以外の人々は皆溺死してしまったため、今日のペルー人はみな彼の子孫なのです。
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* 男一人でどうやって子孫残したんでしょう。やっぱ昔のペルー人は細胞分裂したんだな、そうなんだな?
洪水伝説 鳥乙女 Ver.
昔大洪水が起こって、人間はほぼ全て滅ぼされましたが、ただ二人の兄弟だけはフアカクァン Huacaquan 山の頂に登って逃げ延びました。
二人は、いずれ水嵩が増しこの頂も飲み込まれてしまうだろうと心細く思っておりましたが、不思議なことに水位の上昇と共に山頂も上昇しましたので、二人は溺れることなく生き残ることが出来たのでした。
洪水が引くと、二人は低地に戻り食料を探しました。谷の近くに小さな家を建て、草の葉や茎や根などの粗末なものを食べ生活していました。
ところがある日。二人が家に戻ると、食べ物や飲み物がきちんと用意されております。
「留守の間に食事の用意が出来ているとは、一体どういうことだろう」
「おかしいですね。ひとりでにこんなことになる筈はないですし」
二人は不思議がって顔を見合わせましたが、まともな食事は有り難いので喜んで頂きました。
翌日も、翌々日も、食事の支度はちゃんとしてあります。
それが十日も続くと流石に不審になって、兄の方がこういいました。
「今日はお前一人で出かけてくれ。わたしはここに隠れてなにが起こっているのか見てみよう」
果たして隠れた兄の見たものは、二羽の鳥でした。
アクァ Aqua という鳥と、トリト Torito(もしくはクァカマヨ Quacamayo)という鳥でした。
二羽はカナリ人 Canaris のような服装に髪型で、外衣を脱ぐと麗しい乙女になりました。
しかし、兄は思わず飛び出してしまいました。
二人の乙女はそれに酷く腹を立て、再び外衣を来て鳥になり、飛び去ってしまったのでした。
弟が帰ってきて兄に様子を聞くと、兄は苦笑いをしてしくじった旨説明しました。
弟は家の中を見回し、こういいました。
「道理で今日は食事の支度がされていないのですね。では明日は僕が隠れましょう」
翌朝、兄は出かけ、弟は家に隠れました。
しかし、鳥乙女たちは現れません。
二日経っても三日経っても、彼女たちは現れてはくれませんでした。
しかし、弟は根気強く待ちます。
そして十日目。
ついに、二羽の鳥がどこからともなく飛んでくるのが見えました。
「あれが、兄さんのいってたものたちか」
弟は、息をひそめて鳥たちの様子を見守りました。
鳥たちは家に入り、外衣を脱いで美しい乙女姿になると、家事仕事を始めました。
弟はそっと戸口に近寄り、ばたんと素早く扉を閉じます。
その瞬間、一人の乙女は鳥の姿に戻って外へ飛び出しましたが、もう一人は逃げ遅れ、家の中に閉じ込められてしまいました。
弟は家に入ると、鳥乙女に今までの礼を述べました。
が、鳥乙女にはそれは耳に入らぬようで、ここから出してくれと懇願するのみです。
しかし弟は必死です。必死になる理由があるのです。
弟は鳥乙女にいいました。
「どうか出ていこうとしないでください。わたしたちの奥さんになって下さい」
複数形ですがそこは気にしないで下さい。
その様子に鳥乙女は逃げられないと観念し、兄弟の花嫁になることを承知しました。
兄弟の妻となった鳥乙女は、六人の男の子と女の子を産みました。
彼らの子孫はカナリ族となり、クァカマヨ鳥を尊び、祭祀にはいつもその羽根を飾るのでした。
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・鳥乙女ナスカ、とか思い出したりしてみたり。
・多夫一妻というのはそう珍しくない風習なのですよ。
・これはクィト Quito のカナリバムバ地方 Canaribamba に住んだカナリ族の起源神話なのだそうです。
四人の兄弟
四人の兄弟が、パカリ・タムプ「曙の家」に住んでいました。
ある日長男は、近所の山の頂上で石を四つ拾いました。
そして、北と南と東と西に一個ずつひょいーんと投げ、
「全ての方位に石を投げたんだから、全ての方位にある目に届く限りの土地はぜーんぶわたしのモノだもんね」
と弟たちに告げました。
次男と三男は唯々諾々と従いました。
しかし末っ子は、あんなしょーもないことで全ての大地を我がモノにしようなんて冗談じゃない、と機会を狙うことにしました。
ある日。
末っ子は長男をある洞穴の近くに誘い出しました。そして、隙を見せた兄をいきなり中に押し込み、大きな石で入り口を塞いでしまいました。
次に次男を誘って高い山に登り、いきなり崖から突き落として石に変えてしまいました。
三男は事態に気づくと、このままでは自分の身も危ういと思い姿をくらましました。
そして一人残った末っ子が、全ての土地を我がモノにしたのです。
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* 末っ子一人勝ちは普遍的なお約束。
黄金の杖
太陽と月に二人の子供が居ました。名はマンコ・カパックとママ・オウロ。二人は兄妹であり、夫婦でもありました。
あるとき太陽は、二人に向かってこういいました。
「天から人間の世界を眺めていると、わたしは悲しくなるのです。人は争いと飲食して騒ぐこと以外なんら心得ていません。気の毒すぎます。おまえ達二人、地上へ行って彼らに様々な技を教えてあげて下さい」
二人は快く承諾します。
太陽は黄金の杖を取り出し、
「これを持って行きなさい。これを持ってあちこち歩き回っていると、あるところでこれが地中に深く沈むはずです。そこで、人間達を指導するのがいいでしょう」
マンコ・カパックとママ・オウロは黄金の杖を持って、地上のあちこちを歩き回りました。
すると、クスコの地で杖が彼らの手を放れ、地中深く沈み込みました。
二人は顔を見合わせました。
「お父様の仰られたとおりですね。ではこの地で、人間どもを教え導くことに致しましょう」
二人はクスコの地に家をこしらえ、人間達を呼び集めて益となる様々な事柄を教えました。マンコ・カパックは男達に地を耕し穀物を得る術を教え、ママ・オウロは女達に糸を紡ぎ機を織る術を教えたのです。
人間達は喜び、我も我もとクスコへ押し掛け永く住むことになりました。
こうやって都市クスコの礎は出来たのです。
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* インカの人々は、クスコを世界の中心と考え文明発祥の地と考えていたそうです。「臍」を意味する言葉から来る「クスコ」という都市名が、それを雄弁に物語っているのだな。
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